1. ブログ

ブログ

2011年10月23日

傍聴者のパソコン禁止についての反対討論について

傍聴席の規則改正について反対討論を行った理由と背景について
10月21日(金)に、本会議にて、傍聴席の規則改正についての反対討論を行いました。
その理由や背景について、ご説明させて頂きます。
1. きっかけ
今回の傍聴席の規則改正については、「私が議会にパソコンを持込めないのはなぜなのか」から始まります。
5月から無所属で新人区議になり、初登庁で議場を議会事務局にご案内頂いているときに「パソコンを使用してもいいですか」と伺いました。しかし本会議場や委員会室でパソコンが使えませんとの回答があり、驚きました。なぜだろう、と感じました。
6月の定例会中は、始めてのことが多く、疑問に思ったまま終わりました。
そして、定例会終了後、地方自治法や、板橋区議会の規則、慣例等を調べたり、議会事務局に今までの経緯をお伺いしました。
その際、議員が区議会でパソコンを使用出来ない第一の理由としてご回答を下さったのは、「高齢の方が使用出来ない」からとの事です。
傍聴席に区民がパソコンを持込めない理由は、「パソコンに録音機能がついている」からとの事でした。
確かに、規則には、録音禁止とありますが、本会議については、ネット中継をしておりますので、有名無実化しています。
依然として、パソコンの使用を禁止となる、納得出来る理由が見つからないため、「今までのパソコンに関する議論があれば、その資料、そして、パソコンが使用出来ないことについて、関連する慣例や規則があれば頂きたい」と議会事務局にお願いしました。
そして、議員の議場でのパソコンの使用について8月5日に資料を頂く事が出来ました。
頂いた資料には、「会議規則101条 何人も会議中は、参考のためにするもののほかは、新聞紙又は書籍の類を閲覧してはならない」ととりあげられており、解説として、「議事に専念すべきであるという考え方により、会議中は、議事に直接関係のある書籍の類及び参考のためのもの以外の新聞紙又は書籍の閲覧が禁じられている。(H23年8月5日事務局文書)」との記載がありました。
パソコンの持ち込みと、この会議規則で関連があるのでしょうか。
「議事に専念すべきであるという考え方により」とありますが、だれしも議事専念は当然です。
私は、元々、より議事の質を向上するためにパソコンの利用をしたいと考えていました。
結局のところ、パソコン使用については、直接関係のある規則や慣例はないということが分かりました。
規則や慣例に決まっていない事を、なぜ制限されるのかが分かりにくいです。
一議員がどのように本会議や委員会でのメモをとり、資料を閲覧するかは、議会として定めたり、規制したりするべきことなのでしょうか。
議会全体の運営に関わることなら分かりますが、「メモをとるのに、鉛筆かボールペンかワープロかパソコンかiPadか?」という程度のことは、正当な理由がない限り規制はできないのではないでしょうか、との第一印象でした。手書きのメモよりもパソコンでメモを取る人々は増加の一途でもあります。
2. 地方議会における情報公開とは
その後、8月10日(水)に議会事務局からお電話があり、議会でのパソコン使用について、幹事長会や議会運営委員会が開かれることになったということでした。
私が議会事務局に話をしていたことが、委員会の委員長や委員に伝わったようです。
このお電話に、私は違和感を感じました。私は議会でのパソコン使用について議員として提案をするために、議会事務局にヒアリングしていたところ、幹事長会や議会運営委員会が開催される事となっていたのです。
つまり議員が調査途中の段階で、議会事務局が提案をあげる形になってしまったのです。
8月5日の文書を頂いた際にも、私から提案をしますのでとお伝えしておりました。
議会事務局へ私は申し上げました。
「議会事務局は、議員に対して平等であるべきで、こちらから提案をする準備をしているのに断りもなく議会事務局から提案するべきではないのでは。」と。
私は議会事務局を非難したいと思っておりません。仕組みの問題と思っております。
ともあれ、建設的な議論が行われることを願い、良い方向性に話が進むよう、国内外の導入事例などを交え、幹事長会に下記の記事の内容で提案をさせて頂きました。
(書簡: 20110816PC提案資料.pdf、PPT資料: 20110815板橋区議会において区議によるパソコン(PC)使用についての検討資料.pdf、ブログ記事:本会議や委員会での、パソコンの使用について http://p.tl/zerp )
区議のパソコン持込みについて、多様性の観点からも、使えない議員を否定するつもりは私は全くありません。
しかしながら、使えない方がいるからパソコンは禁止です、では課題が残ります。
そう言われてしまうと、民間企業と比較してしまいます。
民間企業にお勤めの方も、公務員の方もパソコンを使えずに覚えざるを得なかった方もいらっしゃったと思います。
しかし、仕事で使わざるを得ない、生活する為には覚えるしかない状況となり、休日にパソコン教室に通う方もいらっしゃいます。
この点からいっても、少なくともパソコンを使えない人がいるから禁止ではなく、文明の利器は活かしていく姿勢に議員もならなければと思います。
ご案内の通り、地方自治法第115条では、「普通地方公共団体の議会の会議は、これを公開する」として、議事公開の原則が定められています。
板橋区議会でも『本会議中継導入検討会報告書』(平成20年)に「公開とは、傍聴の自由、報道の自由、記録の公表である」と記されています。
改革派知事として大活躍された、元三重県知事で現早稲田大学大学院公共政策研究科教授の北川正恭さんは「議会を変えるには、情報公開しかありません。今までの行政は、うそや隠し事が多過ぎたのです。しかし、マニフェストや議会の討論で情報公開を進め、有権者が自分が投票せずにはおられない!と変えていかねばなりません。」と指摘されています。
IT全盛の今の世の中において、公共の情報を閉じたり、隠す事は全く不可能です。ITに関わる方々では、おなじみの知見ですが、情報は公開する事で進化が始まります。一方、閉じた瞬間から、情報は陳腐化が始まります。
ウィキペディアや、ツイッターの基本思想は「文殊の知恵で情報の価値は増す」という事です。
すなわち、仮に第一報の内容で偏りや誤りがあったとしても、「それは本当か」と他の人が情報の裏付けを確認し、結果として多くの人々が多様な意見を発信することで、均衡点となる、確からしい情報に落ち着きます。
ですので、危険なのは情報発信を妨げようと規制する事です。
人々の集合知である、文殊の知恵が働かなくなってしまうからです。
一方、全国市議会議長会でもデータが公表されていますように、全国の地方議会でパソコンが導入される事例は少しずつ増え続けています。
全国の様々な取り組みをご紹介しますと、
平成22年第5回マニフェスト大賞で最優秀成果賞を受賞した流山市議会では、開かれた議会にとの目的から、「流山市議会ICT推進基本計画」を平成21年3月に策定しました。全国に先駆的に市議会ツイッターアカウントを平成22年5月に取得し、試験的にインターネット映像であるユーストリーム中継も開始しました。スマートフォンを全議員に配布し、劇的に電子採決のコストダウンも進めました。小金井市議会では市民が傍聴席にパソコンを持参し、ユーストリーム中継を行う事も認められています。
パソコン導入の先進自治体で議論されている事は、有権者に開かれた議会を目指す事ももちろんですが、地方自治六法や、条例の改定が相次ぎ、冊子は差し替えページで膨大となります。
紙資源の浪費にもなります。よって電子データ化し、各議員が議場で手元のパソコンやスマートフォンですぐ確認出来たらという、議事の質の向上も目指されています。
決算・予算データも、現状の分厚い電話帳のような資料が何冊もある状況では読みにくく、分かりにくいですが、エクセルデータになれば検索や指標計算なども容易になります。
ペーパーレスも進みます(完全のペーパーレスは地方自治法の定めによりしてはいけません)。
アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏が目指されたように、パソコンはこの数年で劇的に操作が簡単になりました。
子どもも高齢の方もスマートフォンを駆使される動きが広まって来ました。
議場でのパソコンは私は佐賀県議会のように全議員に iPad 支給で簡単に安価に済ませる事も可能と思います。
このように全国の先進事例はありますが、まずはパソコンの使用許可から、着実に一歩ずつ進んでいけたらと思います。
3. 議会運営に関わることは議会運営委員会で議論を
そして、8月17日に幹事長会、8月23日に議会運営委員会が開かれました。
私は議会運営委員会の委員ではありませんが、同委員会の傍聴をさせて頂きました。
「区議がパソコンを議場で使用出来るよう、検討を早めよう」との前向きな意見表明を伺うことができ、ほっとしました。
ところが、今度は急に「傍聴席の規則改正」の案件が出て来ました。
確かに、議会運営委員会では、
「議員の発言の一部の言葉を切り取られ、拡散させられる大きなリスクがあるので、傍聴規則にパソコン使用は禁止と明記すべき」という意見は出ていましたが、議運で規則改正をしようという合意は、現場で傍聴していた限りではありませんでした。
そこで、議会事務局に経緯を聞きました。
「傍聴席規則の文言整理をするための改正です」
「どなたからの提案でしょうか」と重ねて伺いましたところ、「議運の話を受け、今後必要になるであろうということで事務局の提案」との事でした。
また、幹事長会の資料は基本的に(案)となっているのですが、今回の東京都板橋区議会傍聴についての規則の改正についてについては(案)と書いてありませんでした。
「規則改正を行う」という確定的な表現を使っています。
(幹事長会資料: 20110921東京都板橋区議会傍聴の規則の改正について.pdf)
これから幹事長会や議会運営委員会にかける資料としては適切なのでしょうか。
そして、9月21日の議会運営委員会では、傍聴についての規則の改正については一言、「異議なし」で終わってしまいました。
全く議論がありませんでした。幹事長会では話し合いがあったと後に聞きましたが、そもそも議会運営についての議論は議運で深めるべきであり、一言「異議なし」では理由が分かりにくいです。将来的には傍聴席でもパソコンの使用を可能にしようと思っているのか、それとも今後も不可と思っているのか伝わりにくくなっています。
議運に参加している会派は全会一致でこの件を採択したので、今度は本会議で採決をとることになりました。
ただ、傍聴席でのパソコン使用について、議運で「異議なし」の一言で終わり、各会派がどのようなご意見をお持ちなのか分からないため、私は各会派にヒアリングに回ることとしました。「区議のパソコン使用と同じように、現状について、規則に明文化した上で、前向きに検討を進めていきたい」というスタンスであれば、私も賛成したいと思っていました。
各会派の幹事長へお話を伺ったときにお渡しした書簡です。
(ヒアリング資料: 20111011板橋区議会 傍聴席へのパソコンの使用の検討について.pdf
しかし、残念ながら各幹事長にヒアリングをさせて頂きました結果、過半数の議員となる複数会派が「傍聴席ではパソコンの使用は今後もありえない」という見解をお持ちである事が判明しました。
「言葉を切り取られてネットに拡散されるなど、大きなリスクがある。」の他、
「紙にメモをすればいいのでは。少し便利になるくらいなら、持込ませる理由にならない。その場で情報発信する必要性はない。家に帰ってまとめて、パソコンに打ち込んで、情報発信をすればよい。」
「昔から杖やゲタは投げられて議員が怪我をしたら困るという話があった。パソコンも投げられて怪我でもしたら困る。」
ということでした。
そこで、どうするべきかを考えました。
議会からの提案案件について、反対討論などは前例がないということも言われていました。基本的に、板橋区は全会派一致で規則改正や意見書の提出をするためとの事でしたが、一人会派は意見を聞かれることはないのです。
4. 反対討論へ
各会派の幹事長の方々へのヒアリング結果で、過半数の議員の方々が傍聴席でのパソコンはありえずとの見解が判明し、今回何もせずに、つまり反対討論をせねば、パソコンの使用等を含めた傍聴席の環境改善について光が当たらないと考えました。少なくとも、多くの人に現状を明らかにする役割が、無所属の私にはあると決意しました。
私は多くの方々とのご相談を経て、反対討論をすることとしました。
(討論内容(概要):20111021傍聴規則改正反対討論.pdf
今回の反対討論をしたことは民主主義のルールに則っていないとのご批判を頂きましたが、事前に通告をし、進行に則り、議長からの許可を受けて、反対討論を行いました。内容については、経緯を説明しなければ今回の全容が分からないので経緯を含めてお話をしました。
ですので、反対討論中、議場は野次が飛び交いましたことは残念でした。議会からの案件に対しての反対討論なので、議員にとっては望ましくない話なのは当然ですが、話し始めるところから野次が飛んでいましたので、それはどう考えても残念でした。私の反対討論中、すぐ後ろに座っていらっしゃる議長が「静粛に」とおっしゃっても、野次にかき消されてしまいました。
例え、気に入らない意見や間違っていると思っていても、多様性の為に、「意見はまず聞こう」という姿勢が望まれると私は思います。野次で萎縮させるような行動はいかがでしょうか。
あの野次が飛び交う本会議場を想像すれば、反対意見は言いたくない、自分の意見は控えておこうと思ってしまうこともおきてくるでしょう。ああいった場に耐えられる人だけが議員になるしかないのでしょうか。
意見は多種多様であり、少数意見を集中砲火し、大声で萎縮させるのは民主主義とは私には思えません。 野次を飛ばす側を見ても、飛ばされる側を見ても、議員になりたいなど思えないのではないでしょうか。
5. 事務局提案
本会議終了後に、議長と副議長に呼ばれました。
「議会事務局提案という言葉を撤回して欲しい」との事でした。
「議会事務局提案はあり得ないから」ということです。
しかしながら、上述のように8月5日の事務局文書に「事務局として発議し、…提案する」と明記されています。傍聴席の規則改正についても、事務局から経緯を伺い、述べたという説明をし、撤回すべきことではないと申し上げさせて頂きました。
(事務局文書: 20110805パソコンの使用について.pdf
また、幹事長会では一人会派は傍聴不可なので、内容を伝えて頂けなければ私には何が正しいかは分からない仕組みです。一人会派の私は、議会事務局からの連絡を受けて判断するしかないのです。そうでなければ、きちんと文書にて、分かるように明記して頂くか、幹事長会の傍聴を許可し、議事録を作成し公開することではないでしょうか。
6. 最後に – 情報公開で期待の出来る区政へ –
情報公開を進めねば、区民と区政の信頼関係は構築出来ません。板橋区議会の投票率は44.02%(平成23年4月選挙)であり、過半数の区民から区政に関わって頂けていないのが現実と思います。
現在、財政難は続いており、産業の転換期で失業者が増え、板橋区では生活保護費も増大が続いています。「区がすべての区民のお世話を見ます」というのは難しい時代になり、区民は「自分で出来る事は地域活動やNPOなどで自分でやっていく」という時代に入っていると思います。イギリスやギリシャの緊縮財政のようになれば、今後住民サービスカットも行わざるをえなくなることもあるでしょう。
しかし、そのときに区民と区政の間の信頼関係があれば、地域のセーフティーネットを充実させ、区民がやれること、行政にしか出来ないことを明確にしていき、必要なところにきちんとお金を配分することも可能となって行くのではないでしょうか。そして住民自治が機能していれば、一人でも多くの人が元気で、一緒に乗り越えられる確率は高まると思います。
信頼関係を構築していくには、議員はリスクを取り、いい話も悪い話も情報公開していくしかないと私は思います。仮に何か間違えたとしても、適時情報公開していれば、改善の手も打てます。クローズであれば間違いにも気付けないことでしょう。
ぜひ今後前向きな、かつ冷静な議論が進んでいく事を、心から願っております。

アーカイブ