2015年6月12日
一般質問報告(1 )学校教育と子どもの放課後について
2015年6月8日(月)、板橋区議会本会議で一般質問をしましたので、ご報告させていただきます。
3回に分けてお届けします。今回は第一回目です。
<学校教育と子どもの放課後について>
「みんなの学校」という、インクルーシブ教育(発達障がいなど特別支援教育の対象となる児童も同じ教室で学ぶことで、互いを理解し合う教育)に取り組む、大阪市公立の大空小学校を追ったドキュメンタリー映画を例に挙げて質問をしました。
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平成27年第2回東京都板橋区議会定例会会議録(6月8日)
一般質問報告(1 )<学校教育と子どもの放課後について>
■井上温子:学校教育と子どもの放課後について伺います。
みなさんは、映画「みんなの学校」というドキュメンタリー映画をご存知でしょうか。
これは、公立小学校でありながら、発達障がいなど特別支援教育の対象となる児童も同じ教室で学ぶことで、互いの違いを理解し合う教育に取り組む、大阪市の大空小学校を追ったドキュメンタリー映画です。 この小学校では特別な支援を必要とする子どもは、全校児童220人のうち30人を超えていますが、特別支援学級に分けずに、一緒に学ぶことを方針としています。
まず、板橋区教育委員会としては、この取り組みについて、どのような見解をお持ちかお伺いいたします。 板橋区でも、障がいのある子とない子が共に学ぶインクルーシブ教育を広めて行けないでしょうか。
教育長:障がいのある子どもと障がいのない子どもがともに学ぶことは、共生社会の形成に向けて経験を広め、社会性を養い、豊かな人間性を育てる上で大きな意義を有するとともに、多様性を尊重する心を育むことができると考えております。
特別支援教育においては、子ども一人ひとりの教育的ニーズを把握し、個に応じた適切な指導と必要な支援を行うことを重要なこととしております。そのため、障がいのある子どもと障がいのない子どもがともに学ぶインクルーシブ教育を進めるために、特別支援教育は必要不可欠であり、本区でも積極的に推進しているところでございます。
■井上温子:下村文部科学大臣は、この映画を観て、文科省300人の職員で上映会を開催し、「日本の全ての学校がこうなったら、本当に日本は変わると思う」とコメントされています。
新庁舎には、教育支援センターが設置されましたが是非、「みんなの学校」を教育委員会や教員のみなさんを対象に上映し、さらには、各学校でも地域の人や子どもたちも一緒に参加してもらいながら上映会をしたらどうでしょうか。
教育長:教育支援センターにおける研修は、児童・生徒理解や効果的な指導・支援のあり方についての研修を主に行っており、限られた時間の中で2時間弱の本作品を題材として取り上げることは難しいと考えております。
各学校での地域の方々や子どもたちに向けた上映につきましては、映画の内容を確認し、上 映する場面が想定できるのであれば、情報提供について検討してまいります。
■井上温子:学校入学時の就学相談の際には、通常学級のご案内も口頭で行っているとのことですが、通常学級にて、支援が必要なお子さんにどのようなサポートを行うのかが、きちんと明示出来る配布物はありません。
「入学のご案内」やHPに、インクルーシブ教育の理念、通常学級に支援が必要なお子さんが通われる際には学校がサポート体制を組みますといった内容を入れることで、教育委員会の指針を明示することが必要だと考えますがいかがでしょうか。
教育長:就学相談では、子どもにとってどのような就学が望ましいかを保護者の意見を尊重しながら一緒に考え、それぞれの児童の実態に応じて特別支援学校、特別支援学級、通常の学級へ の入学を保護者が決めております。
具体的には就学相談会で小児科医、臨床心理士、特別支援学校長等が授業観察や面談を行った上で審議し、その結果を伝え、保護者が子どもの進学する学校を決めております。 通常の学級に入学した児童のサポート体制につきましては、児童の実態に応じ様々な対応を行っており、一般的な形でホームページや入学案内の冊子に掲 載することは適切でないと考えております。
■井上温子:インクルーシブ教育を進めるには、「通常学級で対応できるだけの体制と人員が整えられるのか」が大事な点です。障がい児が通常学級で共に学びたいという場合、どういうサポート体制をとるのでしょうか。
教育長:集団の中で特別な支援を必要とする子どもに対して実態に応じた個別の指導を行うなどどの子どもも安心して学習できる体制を整えております。全ての区立学校・園に、学習指導講師を配置しており、各学級の担任と連携しながら個別指導、不登校や特別な支援を必要と する児童・生徒への支援などのサポートも行っているところでございます。
■井上温子:一人の先生だけでクラス運営が難しい際には、定期的に地域の方にサポートして頂く体制も進めていく必要があると考えます。
なかなか日常的に学校運営を支えて下さるボランティアについては、集まらないといった声を聞きますが、学校地域支援本部や学校関係者や地域の方とこの映画を観る事によって、地域で学校をつくっていく機運を持ち、ボランティアの関わり方を見直すこと、再度、定期的に学校運営に関わるボランティア募集していくことが必要だと思いますがいかがでしょうか。
教育長:教育委員会では、いたばしの教育ビジョンで、地域の子どもは地域で育てることを掲げております。その施策の1つとして、学校支援地域本部事業を現在、36校で実施をいたして おります。学校の必要に応じて、学校の求めに応じて地域のボランティアが支援する仕組み づくりを行っており、順次拡大し、全校展開を目指しております。
学校関係者やボランティアへの「みんなの学校」の上映につきましては、映画の内容を確認し、活用する場面が想定できれば、情報提供について検討してまいります。
■井上温子:現状の板橋区の小中学校においては、特別支援学級の子どもたちとそうでない子どもたちが、日常的に関わることはあるのでしょうか。
イベント時や特別な時だけでなく、通常学級で出来る限り一緒に朝の会をやったり、授業を受けたりし、難しいときは特別支援学級で過ごすといった日常の関わりを増やして行く事が大事であると考えますがいかがでしょうか。
教育長:特別支援学級と通常の学級の子どもとの日常的なかかわりの事例としては、小学校では朝の会、集会、給食、縦割り遊び、縦割り清掃、行事、遠足、移動教室等で交流したり、生活 科、総合的な学習の時間、音楽科、図画工作科等での共同学習を行ったりしております。
中 学校では、学年集会、行事、運動会、文化祭、学年遠足、郊外学習、移動教室等で交流を行 っております。また、復籍の児童・生徒が在籍する学校では、学期に1回程度、授業や行事 での交流を行っております。
■井上温子:そして、いたばしの教育ビジョンについてですが、インクルーシブ教育の観点を入れるべきと考えますが、いかがでしょうか。
教育長:インクルーシブ教育では、陣がいのあるなしにかかわらず、一人ひとりの多様な特性やニーズを考慮し、全ての子どもを受け入れ、ともに育ち学び合うという教育を目指しております。次期板橋の教育ビジョンの作成に当たりましては、特別支援教育の推進を重要施策の1つとして位置づけ、検討してまいります。
■井上温子:子どもの放課後についても、要支援児があいキッズに通えるサポート体制を充実させてください。
現在では、医療ケアが必要なお子さんについても、介護職でたんの吸引等が出来るため、あいキッズで職員を加算することで対応可能なはずです。見解を伺います。
教育長:次に、あいキッズにおける要支援児へのサポートについてのご質問です。 あいキッズでは、要支援児への対応のため、学校教諭や保育士等の有資格者、または経験者を配置し、児童への指導等を行っております。参加児童に医療行為を行うためには、原則 として医師、歯科医師、看護師等の資格が必要となり、主たる業務が児童の指導である、あいキッズ事業におきましては、医療行為を行える有資格者の配置については、現時点では考えていないところでございます。
■井上温子:子どもの貧困の連鎖解消を目的として、学習支援事業が板橋区でも始まりました。昨年度、学習支援事業のコミュニティスペースとの連携した取り組みについては前向きな答弁がありましたが、子どもたちのために協力する人たちのネットワークづくりを進め、情報共有をしていくことが必要だと考えます。
全区への取り組みにしていくためにも、また、同じ金額でも最大の効果を出すためにも、地域の多様な活動や資源を有効に活用した予算配分にしていってはどうでしょうか。
区長:コミュニティスペースと生活困窮者自立支援法に基づく学習支援事業との連携につきましては、今年度から開始しました学習支援事業の効果を検証しながら、事業を発展させていく中で考えてまいりたいと考えております。
■井上温子:次は、子どもたちが安心して遊ぶ場所を選択できる地域づくりを目指して質問します。 不審者情報が多い中、年々、地域の公園には子どもの姿が少なくなって来たように思います。
そこで、自然と大人の目がある中で、子どもたちが安心して遊べる環境づくりとして、多世代が過ごせる居場所併設型公園づくりを進め、子どもが思いっきり遊べる公園づくりを出来ないでしょうか。
集会所をコミュニティスペースにし、室内では高齢者や乳幼児連れ親子の多世代交流が行われ、外では子どもたちが元気に遊んでいるといった理想的な社会が描けるのではないでしょうか。公共施設の統廃合の計画が進んでいますが、このような「創造」が今、必要ではないでしょうか。伺います。
区長:区では、地域がつくる公園制度や花づくりボランティア制度などにおいて、高齢者をはじめとしました地域の方々が公園で過ごす仕組みづくりを進めてまいりました。
今後、ユニバーサルデザインを取り入れた公園づくりを行いまして、高齢者に優しい公園づくりや、子どもやお母さんに優しい公園づくりを進めてまいりたいと考えています。
ご提案のございました多世代居場所併設型やコミュニティスペース併設型の公園づくりにつきましては、全国の自治体などの取り組みを踏まえて研究を進めてまいりたいと考えております。
教育長:学び支援プランの中で、地域人材による学校、家庭の支援の促進を掲げておりまして、今年度、その施策として、板橋区は放課後対策事業としてのあいキッズを区内全52の小学校で学校施設を利用して実施しており、地域コミュニティの基盤であります学校で、放課後の子どもたちの安心安全な居場所を提供しているところでございます。
多世代が過ごせる居場所併設型公園につきましては、全庁的な方針に沿って、教育委員会として有効活用などについての役割があれば、検討してまいりたいと考えております。
■井上温子:次に、平成24年11月15日に起こった放課後子ども教室での暴力事件についてお伺いいたします。
事件が起きてから、2年経っていますが、解決が長引けば長引く程被害者の方にとってもつらい期間が続きます。今回の事件における教育委員会としての反省点と責任の有無についてお伺いします。事故の責任や賠償を、本当に全て事業者責任としてしまっていいのでしょうか。賠償を区として行えるように予算を組む必要はないでしょうか。
民間委託を進め、区は「リスクのない仕事しかせず、責任は持ちません(賠償もしません)。」としてしまっては、区民に何かあったときの課題が大き過ぎると思いますので見解を伺います。
教育長:区の委託事業につきましては、区が実施主体であり、責任を持って対応しており、直営であるか、委託であるかを問わず、故意または過失により第三者に損害を与えた場合、損害賠償を負担する必要があると考えております。
いたばし放課後子ども教室事業は、教育委員会の主催事業として実施しておりましたが、委託契約の中で故意または過失により第三者に損害を与えた場合は、受託者が責任を持って対処し、損害に要する費用は、全て受託者が負担することとしておりますので、一義的に受託者が対応しているところでございます。保護者の十分な理解が得られていないことは遺憾であり、反省点だと考えております。