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2016年11月21日

10/28(金)決算討論報告:多様な人たちがともに支え合いながら生きる共生社会の実現へ

10/28(金)本会議でH27年度板橋区決算に対して討論を行いました。
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平成28年第3回東京都板橋区議会定例会会議録(10月28日)
○議長(杉田ひろし議員)井上温子議員。
 
○井上温子
報告第1号「平成27年度東京都板橋区一般会計歳入歳出決算」、報告第2号「同国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算」、報告第3号「同介護保険事業特別会計歳入歳出決算」、報告第4号「同後期高齢者医療事業特別会計歳入歳出決算」認定に、反対の立場から討論を行います。
 
板橋区は、消費税率引き上げや企業業績の改善、個人所得が伸びたことにより、歳入増となり、歳入歳出差し引き黒字となりました。一方で、新聞等での報道によると、厚生労働省が平成27年6月から7月に行った国民生活基礎調査では、生活が「大変苦しい」が27.4%、「やや苦しい」が32.9%で、「苦しい」と答えた方が60.3%。昨年より2.1%下がりましたが、依然高どまりしています。
1990年代前半は、30%から40%台であった「苦しい」の割合は次第に高くなり、 2011年に61.5%と、初めて6 0%台を突破しております。その後は高いまま推移している状況とのことです。
【子どもの貧困について】
「苦しい」の割合は高齢者世帯が58%、児童のいる世帯が63.5%となっており、児童のいる世帯が全世帯の平均よりも生活の苦しさを実感していることがわかります。また、日本経済新聞の報道では、以下のように報じられております。日本財団は、2015年12月3日、貧困家庭の子どもを支援せずに格差を放置すると、現在15歳の子ども、1学年だけでも、社会がこうむる経済的損失が約2兆9,000億円に達するとの推計を公表しました。政府には、約1兆1,000億円の財政負担が生じるとしております。
また、日本財団は、子どもの貧困を放置して生じる経済的損失は大きい、教育格差の解消 に向けて対策を進めるべきだとしています。
推計は、貧困対策を必要としている対象を、15歳の子ども約120万人のうち、生活保護受給世帯とひとり親家庭、児童養護施設にいる約18万人としております。国などが、高 校進学率と中退率を全国平均並みに改善させて、大学進学率も上げる支援をした場合と支援しなかった場合を比較し、子どもが64歳まで得られる所得額の差を算定しています。
支援をした場合、64歳までの所得が約25兆5,000億円になるのに対し、支援がないと約22兆6,000億円にとどまる。進学を促して収入のよい仕事につくチャンスを広げないと、社会の差額の約2兆9,000億円を失う形になります。 64歳までに納める税金などから社会保障給,付を引いた額は、支援すれば約6兆8,000億円となるが、しないと約5兆7,000億円に減ってしまう。その差額は約1兆1,0 0 0億円分が政府の財政負担となる計算です。これは日本財団と三菱UF Jリサーチ&コンサルティング株式会社が、子どもの貧困を放置した場合の経済的影響を推計する研究を行い、 算出した結果をもとにしています。
さらに、ノーベル経済学賞受賞者で、シカゴ大学のジエームズ・ヘックマン教授は、「恵まれない境遇にある子どもたちに対する投資は、公平性や社会正義を改善すると同時に、経済的にも効率性も高める非常にまれな公共政策である」と結論づけております。
就学前教育は、塾とか勉強をやらせるということではなく、その子に合った学びの提供や成功体験をする環境が大事であるということです。事例では、午前中は学校で午後は先生が家庭訪問をして実施するというものでした。
つまりは、家庭でだけではなく、社会としてどのようにするのかということが重要とわかります。
また、平成22年の国勢調査時点で、板橋区は単身世帯が50.1%を超えております。このような社会状況と平成27年度の板橋区の政策内容が整合しているか、というところから討論を行わせていただきます。 まず初めに、あたたかい人づくりナンバーワンについてです。
【あいキッズについて】
最初に、あいキッズについてですが、小学校1年生から6年生まで受け入れているあいキッズ。待機児童ゼロを実現したと言いますが、中身を見ていく必要がないでしょうか。本当に学童が必要であった子どもたちが通えなくなってはいないでしょうか。
板橋区が実施した平成26年4月から7月に実施の新あいキッズに係るアンケート及びモニタリング調査では、あいキッズ未利用者のアンケート回答率の低さが大変気になりますし、具体的な状況の聞き取りが必要だと思いますb
また、おやつの提供時間について、「満足」、「おおむね満足」、「普通」が36.7%、 「どちらかといえば不満」、「不満」が56.2%という結果が出ております。「どちらかといえば不満」、「不満」の主な意見は、おやつの時間が「夕食に影響する」とされており、 私を含め多くの議員から以前から指摘されていることが、これだけの不満の数値としてあらわれております。改善が必要であったのではありませんか。
【認証保育所と保育料負担軽減助成金について】
次に、認証保育所と保育料負担軽減助成金についてです。
区民税所得割額によって、2万円からゼロ円まで区が補助を行っていますが、問題は、低 所得者層へ寄り添った制度になっていないことです。
平成27年度は、区民税所得割額が18万600円未満の方が3,778月と、全体の65%を占めております。きちんと利用者の所得分布を分析して、低所得者に寄り添った制度に改善すべきです。
就学前教育や就学前の環境整備が未来の社会に与える影響については、さきに述べたとおりです。低所得者の状況の方にこそ、早くから手厚い支援を行うことで、結果として経済効果を上げていこうとする姿勢を見せていただきたいと思います。
【ひとり親家庭に対する援護について】
次に、ひとり親家庭に対する援護についてです。
特に家事援護者派遣については、平成25年7月から制度改正を行い、予算額も派遣日数も当時からは大きく減ってきています。利用回数や時間の制限、所得による負担を緩和していただきたいと思います。
ひとり親の方は仕事も育児も背負わなければならず、精神的にも負担が大きい場合があります。さらに、なかなか人にも打ち明けられておらず、こういった制度を利用するまでに時間がかかるケースもあるでしょう。是非制度自体を当事者に寄り添って緩和したものにしていただきたいと思います。
所得による負担もできれば減らしていただきたい。それなりに所得があっても、一人で働いて将来にわたって子どもを養っていかなければとなると、どうしても出費を抑えようと、自分で全て引き受け、頑張ろうとしている方がたくさんいらっしゃいます。
将来のためを思うがために、仕事も育児もいろいろなことを抱え込んでしまいがちになる現状を身近で見ます。働いて頑張っていこうとする人にも無償でサポートを届けることが、途中で折れてしまいそうな負担を少しでも和らげることになればと願っていますし、将来にわたって働き続けられることで、財政的にもプラスになるのではないでしょうか。
 
【生活困窮者自立支援制度について】
次に、生活困窮者自立支援制度についてです。
まなぶ~すでは、子どもに対する学習支援や居場所の提供を行っていますが、以前から提案しておりますが、子どもたちの居場所を地域の人たちとの協働で、もっと身近な地域ごと にあるよう広げていけないでしょうか。子どもたちが通える範囲、歩ける範囲というのは限られます。
そして、子どもたちは支援を受けることが大事なときもありますが、役割を担える経験や成功体験、周囲の大人から期待されたり褒められたり、そういったことが日常的に築ける環境づくり、それこそが大切ではないでしょうか。
学習だけに限らない直接的な支援でないところからも、子どもたちの自尊心が回復されて、結果的に学校生活や学び、将来に向けて一歩前向きになる姿を目にします。
板橋区にもこども食堂が広がりを見せていたり、それ以外にも子どもたちをサポートする活動の輪が広がってきております。行政ができることは、財政的にも規模的にも限られているのですから、既存の区が始めたような制度や取り組み以外の活動、こういった地域で活躍する人たちと手を取り合って、小さな政府になりがちな今こそ、大きな社会を目指していく努力を見せていただきたいと思います。
 
【元気なまちづくりナンバーワンについて】
次に、元気なまちづくりナンバーワンについてです。
地域会議につきましては、決算総括質問でも取り上げましたが、平成27年度の予算執行率は約50.8%で、毎年事業が円滑には進んでいないのが現状です。
この大きな要因が、今回、決算調査特別委員会の区民環境分科会にて明らかになりました。地域会議についての位置づけをするはずであった自治基本条例が制定されていなかったということです。
自治基本条例と地域会議は車の両輪のように機能していくものでしたが、片方が途中で途絶えてしまったことで、片方の車輪だけではうまく進めていなかったということです。
さかのぼりますと、平成22年6月に、行政側の呼びかけに応えて公募委員49名が集まり、自治基本条例の区民ワークショップが始まりました。私も当時、委員として参加しておりましたが、当時のワークショップでは、「自治基本条例が本当に要るのか」といったそもそも論も出ていましたが、「このワークショップは、条例が必要だという前提に立って条項の検討をする場である」と、そんな説明が幾度となくされたのを覚えております。 そして、区民ワークショップ終了後、区長へ報告書を提出し、その報告書を受けて、本来であれば板橋区は、自治基本条例案検討のための委員会」を設置するはずでした。
報告書にもこのように書かれております。「平成23年度には、新たに学識経験者や区議会議員、各種団体代表、公募区民などで構成する委員会を設置し、この報告書をはじめ、さまざまな視 点から広範なご議論をいただき、十分に時間をかけて検討を深めていくべきものと考えています。
しかし、その後、委員会は設置も開催もされず、自治基本条例の議論は消えてしまいました。
このようなことがあってよいのでしょうか。
板橋区のホームページ上からもご確認いただければわかりますが、区民ワークショップ以降の議論がまったくわからないのです。
このようなやり方は、自治基本条例の「自治」こそが揺らぐものではないでしょうか。条例が必要か必要でないかなど、多様な意見があるでしょうが、少なくとも計画どおり委員会を設置して検討し、その委員会の中できちんと議論を踏まえ、結果を示すべきではなかったでしょうか。
長い年月が経っていますが、先日の決算総括質問の際には、まだ自治基本条例が消えたわけではないとのことでしたので、区民に見えるように検討を進めていただきたいと思います。
 
【安心・安全ナンバーワンについて】
次に、安心・安全ナンバーワンについてです。
板橋区居住支援協議会居住支援モデル事業補助金で、板橋区においても、空き家・空き室等活用した居住支援活動を行う団体への補助事業が、平成27年7月に募集されました。
私もこういった事業を提案してきたことでありましたので、この一歩はうれしくはありましたが、この募集に対し1件も応募がありませんでした。
申し込み期間が1カ月半と短過ぎたこ と、またこの短い期間の間に自分で空き家を見つけて、その活用案を持って応募しなければいけないことなどが、大きな課題であったと指摘しております。
以前から紹介していますが、世田谷区では、空き家の所有者と地域貢献したい人とを結ぶマッチングをされています。地域資源や人がつながるプラットホームの役割こそ行政が担っていく必要があり、そうすることで応募がゼロということも改善できたはずであったと考え ます。
【公共施設のバリアフリー化について】
次に、公共施設のバリアフリー化についてです。
トイレの問題を取り上げますが、大人用ベッドに限らず、だれでもトイレなどに今までにはあまり言われてこなかったが、今後は基本的に設置が必要であろうという設備については、どうしたら板橋区全体の部署で共有していただけるのでしょうか。
私は毎回、区施設や設備が新しくなるたびに、この大人用ベッドについて要望しておりますが、これは健全ではないと考えます。大人用ベッドは、対応していきたいと区長も前向きに捉えられているわけですから、それを設備更新に合わせて各部署がきちんと共有している状況になるよう、情報整理を行っていただきたいと思います。
バリアフリーマップについても、次回更新時に大人用ベッドを掲載するよう検討してくださるという方向であったように記憶しておりますが、今回のバリアフリーマップを発行された際には、すっかりと抜け落ちてしまっていたことも、私は本当に残念でなりませんでした。改善を求めたいと思います。
 
【男女平等の推進について】
3つのナンバーワンに共通して、男女平等の推進についてです。
審議会等への女性の参画推進についてですが、平成27年度までの目標値が、40%に対 して30.6%にとどまりました。このうち法律、条例により設置されているものについては、28.7%と大変低くなっております。板橋区の部課長をいきなり女性40%にするというのは難しいということはわかりますが、審議会等については、すぐにでも改善していけるはずです。また、まちづくりの計画の話を聞いていると、若者や女性が住みたいと思えるようなまちづくりをしようと、ターゲットにしていただいているように思いますが、皆さんと共有した いのは、若者も女’性も住みたいまちや過ごしたい制度をつくってもらう人ではなく、「つくる側」であるということです。
さらに言えば、飾りのようにワークに参加したということではなくて、きちんと制度をつくる主体としてということを再確認しておきたいと思います。
最後に、今後板橋区は、集会所の閉鎖や児童館の縮小といった方向で進んでいきますが、今一度見直していただきたいと思います。行政は行政にしかできない福祉の部分を集中して取り組むこと、ほかにもう一つ、行政がすべきは、住民が活躍できる環境づくりです。
地域のつながりが希薄になり、さまざまなことを行政がしなければならない状況となったり、多くのことがビジネス化していきました。
しかし、今後このままでは持続可能な未来はないと思います。ひとり暮らしの高齢者の増加、共働きやひとり親家庭の増加、障害者の地域での暮らしや外国人との共生など、多様化する社会状況の中で鍵となるのは、コミュニティを生み出す仕組みづくりです。交流の場が人と人とをつなぎ、コミュニティを生み出すこと、そしてボランティア、NPO、住民との協働による大きな社会をつくることこそが、多様化する地域課題の解決や、多様な人たちがともに支え合いながら生きる共生社会の実現に 重要な視点と言えるのではないでしょうか。
【特別会計について】
次に、特別会計についてです。
国民健康保険事業特別会計については、調定額に対する収入率は72.2%で、前年度と比較し0.5ポイント上昇となりました。
低所得者が多い国民健康保険制度において、今の 保険料が適切かというと、大きな疑問があります。
また、平成26年4月に新たに70歳になる者から、段階的に一部負担金は2割となりましたが、平成26年3月末までに既に70歳に達している者は、特例措置の1割を継続するという不公平な見直しであり、納得できるものではありません。
介護保険事業特別会計については、介護予防事業費について取り上げます。 平成23年度の全国の介護予防事業費と板橋区の平成27年度の介護予防事業費を比較すると、板橋区の介護予防についての今までの取り組み姿勢が見えます。
特徴的なのは、介護予防事業費に対する介護予防普及啓発事業の割合について、全国的には24%ですが、板橋区では43%。逆に、介護予防事業費に対する地域介護予防活動支援事業については、全国的には13%ですが、板橋区ではたった1.2%となっています。こ の1.2%と極めて低い地域介護予防活動支援事業の内容は、介護予防グループ支援事業や地域ボランテイア養成事業です。
今までの板橋区の介護予防政策は、地域資源や地域力を生かして推進していくといった試 みが弱かったといえる予算配分です。後期高齢者医療制度でも、持続不能と言われながら、低所得者の保険料最大9割軽減している特例措置を、平成29年度から段階的に廃止する案が今、議論されています。
しかし、そもそも特例措置をつくらなければならないような制度が、私は問題だと考えております。
年金生活をしている低所得者の人たちの負担を上げていくような方向では、耐え切れず生活保護世帯の増加を招くだけだと考えております。
以上の理由から反対をし、討論を終わります。
 

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