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2023年9月14日

令和5年3月20日予算審査特別委員会

令和5年3月20日予算審査特別委員会-03月20日-01号

  • 地域社会の実現に向けて

 

①地域福祉の担い手の育成について

 

〇井上温子

地域福祉の担い手育成について2つまとめて質問させていただきます。地域共生社会の実現に向けては、地域福祉の担い手育成が重要な鍵を握っています。「地域保健福祉計画」によると、板橋区では社会福祉協議会(社協)をほかの団体と差をつけ、区と補完・補強し合う位置づけとしています。そして、来年度地域福祉コーディネーターと新たに3事業について社会福祉協議会を指定して委託予定です。その額は来年度だけで4,372万円に上ります。全事業総額では来年度予算で区から社協へは3億9,000万円ほど計上されています。一方、いたばし総合ボランティアセンターの報告の際は、社協が1民間団体であるとして公募への参加を認め、板橋区で地域活動をしているNPOと競い、社協が受託をしました。これだけの地域福祉予算をつぎ込まれている社協と公募で戦うことは公平なのでしょうか。地域福祉関係の予算を社会福祉協議会に一極集中して流し続けるのはおかしいのではないでしょうか。見解を求めます。また、このように何でも社協が担うようなことを続けていると、10年後、20年後、地域福祉の担い手を育ててきた区とそうではない区で大きな開きが出てきます。今、まだ小さな団体であっても地域福祉を担う団体と信頼関係を構築していき、強化できる団体を育てていくべきではないでしょうか。見解を求めます。

 

〇福祉部長

社会福祉協議会は、地域の福祉活動を推進することを目的とした公益団体です。地域における多様な社会資源とのネットワークを有しているその強みを期待し、区の事業の委託として選定をしたものであります。一方、社会福祉協議会の委託業務が増えていることは認識しておりまして、今後は委託先の選定に当たり、同団体以外にも担うことが可能なものについては見直しを図るなど、契約の相手方について精査していきます。また、区が進める包括的な支援体制の構築に当たっては、地域団体を育成する中、区との強固な関係を構築することが重要であると考えております。今後、地域団体との協働関係を築く中、委託事業や補助事業などを担っていただくことで、社会福祉協議会への委託業務の集中を軽減していきたいと考えております。

 

〇井上温子

地域福祉は個人の担い手も重要です。高齢化が進んでいますが、地域福祉の担い手として高齢者も注目されています。超短時間労働や有償ボランティア、(無償)ボランティアなど、ニーズに合わせた活躍の場が求められます。高齢者等の多様な就労機会の拡大についてどのようにお考えでしょうか。

 

〇福祉部長

高年齢者の多様な雇用・就業ニーズに応えるためには、事業者による取組のほか、地域の関係者が協働して多様な就労機会を創出していく取組が必要であると考えます。地域福祉の担い手を増やし、社会参加を推進するなど、高年齢者の特性に合った多様な就労形態について、課題を認識するとともに研究をしてまいります。

 

〇井上温子

ぜひお願いしたいと思います。

 

②居場所と地域福祉拠点について

 

〇井上温子

居場所と地域福祉拠点について伺います。来年度、ケアリーバーやひきこもり支援で居場所事業が実施されるとのことは評価いたします。しかし、今まで認知症カフェ、高齢者の通いの場、子どもの居場所と、縦割りの居場所事業が進められてきています。自殺対策でも居場所の必要性が議論されています。地域は縦割りではありません。同じ場所にひきこもりがちな方、リストカットの痕がある方、ひとり親家庭、高齢者、障がい者など様々な方がいらっしゃいます。縦割りの居場所事業のままでよいとお考えでしょうか。

〇福祉部長

福祉部では、新年度よりひきこもりの居場所事業を開始しますが、多分野を俯瞰した居場所の整備については、まずはそれぞれの所管の各事業の取組の効果と影響を検証し、調整する必要があると思います。その結果を踏まえて、分野横断的な居場所の在り方についても検討していきます。

 

〇井上温子

「板橋区地域保健福祉計画」には、「誰もが集える地域の居場所づくり」と明記されていますが、月に数回行うような活動の記載にとどまっています。これでは、地域共生社会として示される縦割りを超えること、支え手と受け手という関係を超えること、世代や分野を超えて丸ごとつながること、一人ひとりの暮らしと生きがい、地域を共につくっていくことは具体化されないと考えます。何が必要なのかというと、分散的にばらばらと予算をつけるのではなくて、常設の多世代共生型の地域福祉拠点が必要です。日常をシェアして、多様な人がたまる場所があれば、世代や分野を超えて丸ごとつながることができます。つながりが生まれれば、自分のできることで役割を持てる機会が生まれます。介護予防とか生きがい支援を実施しなくても、自然と生きがいが持てるまちになると思います。結果的に、地域福祉を担い、共に地域をつくる人が増えていくのではないでしょうか。ぜひ地域福祉拠点を明確に地域保健福祉計画に位置づけていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 

〇福祉部長

多世代共生型の居場所の常設については、地域共生社会の実現に資する取組であると認識をしております。その実現に向かっては、それぞれの事業の整合性、それから費用対効果等を踏まえ、その整備の在り方について研究をしていきます。

 

〇井上温子

ありがとうございます。地域共生社会に資する取組だということで答弁いただいたので、期待はします。ただ、その研究はいつまで行うのでしょうか。研究をし続けて10年、20年、30年を経ては遅い政策になってしまいます。ぜひ実りある研究をしていただいて、検討につなげていただき、実現していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

③第3層に拠点とコーディネーターの配置

〇井上温子

現在、生活支援コーディネーターも、地域福祉コーディネーターも、とてももったいない配置になっていると思います。第3層の現場が一番大事なのに、第3層を意識した予算化が進んでいないのが要因だと思います。地域拠点の現場に、参加支援や相談支援、地域づくりを行う人材を置くことが突破口になると考えます。重層的支援体制整備事業では、分野横断的な事業展開が実施可能です。第3層に拠点とコーディネーターの配置を意識した事業をぜひ検討していただきたいです。見解を求めます。

〇福祉部長

生活支援体制整備事業は、介護保険法に基づき実施している事業であり、第2層協議体を構築することにより、板橋区版AIPを推進する原動力となっております。第3層となる地域団体等についての予算化や重層的支援体制整備事業の活用については、先進事例の取組などを踏まえるとともに、区としての支援の在り方など、情報収集に努めていきます。

 

〇井上温子

先進事例の情報収集をするのはよいですが、先進事例をつくるような行動が必要だと思います。重層的支援体制整備事業が特に新しいものですから、なかなか事例も出てきません。参加支援を行うというのはこれから必要な事業です。ぜひ前向きに進めていただきたいと思います。

 

2.インクルーシブな分散型就労について

  • 施設外就労について

 

〇井上温子

インクルーシブな分散型就労について伺います。就労継続支援A型やB型は、事業所内だけで働くのではなく、施設の外で働く施設外就労を行うことができます。富山県では、そもそも働く施設自体がなく、施設外就労のみの事業所があり、以前は特区として行われていましたが、今では全国で実施可能な事業となっています。現在でも公園清掃や封入作業などを行っているのは承知していますが、施設外就労の可能性は高く、拡大していくことで、町中を障がい者就労の場所にしていき、インクルーシブな地域社会を目指していけないでしょうか。障がい者就労として実現されなかった区役所1階の食堂や主要図書館のカフェをはじめ、ふれあい館等、板橋区の関係するところでも受入れ先として適していると思われる場所があると思います。また、小さな商店では、人を常時雇うほどではないけれども、納品のときの2時間勤務してくれたらありがたいとか、業務が集中するときにいてもらいたいとか、障がい者の施設外就労の受入れ先として一定の需要があると思います。企業や商店にとっても、施設外就労から始めれば、障がい者が働くことへのハードルが下がり、一般就労の機会拡大にもつながると考えます。板橋区では、来年度チャレンジ就労を拡大し、障がい者就労に力を入れていくことと思います。ぜひ施設外就労の開拓にも力を入れていただきたいですが、いかがでしょうか。

 

〇福祉部長

就労継続支援A型及びB型の事業所では、通常は施設内での作業を行っておりますが、例えば清掃業務、製品の袋詰め、パンフレットの修正など、仕事の依頼先に出向いて行う場合もございます。障がい者が外に出向いて作業を行うことは、就労の機会を増やすだけではなく、障がい者が一般就労するためのスキルを磨くということにもつながります。それとともに障がい者の働く姿を(施設)外の人に知ってもらうことで、理解を促進するという役割が得られる機会となります。区では、施設外就労の拡大という手法も含め、今後、障がい者の一般就労を積極的に推進してまいります。

 

②福福連携について

 

〇井上温子

次に、「福福連携」について取り上げます。福福連携とは、働き手が不足している福祉業界と障がい者の働き場の不足や工程が少ないなど、双方の課題を解決する取組です。板橋区においても、一部の福祉施設で障がい者就労を受け入れているのは承知していますが、それは全体からするとごく僅かです。石川県ではリーフレットを作成し、高齢者施設と障がい者就労施設が連携するための業務受託マッチング、福福連携の普及啓発などを行っています。ぜひ板橋区でも取組を実施していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 

〇福祉部長

福福連携の例として富山方式がございますが、高齢者デイサービスの業務の一部を障がい者が担うことで障がい者の就労の機会を確保、提供しているものでございます。障がい者の就労支援事業所が、高齢者施設等で食事や入浴サービスを提供したり、話し相手になったりすることは、同じ福祉施設ということで親和性もあり、今後連携していく素地があるものと考えております。障がい者が地域で働き、健常者と共に共生していくインクルーシブな社会を目指して、区ではこうした先進事例も参考に必要な施策を進めてまいります。

〇井上温子

ぜひ進めていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 

3.サービス付き多世代向け住宅について

 

〇井上温子

サービス付き多世代向け住宅について質問させていただきます。高齢者白書によると、自宅で死にたい人は半数を超えているのに、実際は17%しか自宅で亡くなることができていません。障がい者は、ずっと板橋区で暮らし続けたいと願う人や家族が多いです。グループホームや施設は必要ですが、それだけを進めても一向に充足することはないでしょう。子育て家庭は核家族化が進み、子ども1人を見る大人の数が少ないため、家庭の中だけで子育てをするには大変な時代となっています。そこで支援付きの住宅、多世代住宅を増やしていく必要があると考えますが、施設をどんどん造るのはこれからの時代に合わないと考えます。サービス付き多世代向け住宅を構想する上で、サービス付き高齢者向け住宅やセーフティーネット住宅の事業が参考になりますが、これら支援策を分解すると、食の支援、相談、生活支援、安否確認、交流支援です。サービス付き高齢者向け住宅に移り住まないと高齢者の場合は実現できないものでしょうか。今まで、高島平では分散型サ高住を展開しています。生活支援サービスだけの展開もあり、今までの施設の中だけで展開するものとは違います。また、「はっぴーの家ろっけん」(神戸市長田区)では、高齢者向け住宅のスペースに多世代が日常的に集うものとなっている場所もあります。町中に日常的な食事が提供できる地域食堂兼地域交流スペースがあって、生活支援や安否確認を日々行う事業者がいれば、板橋区にある全ての住宅がサービス付き多世代向け住宅になることができ、障がい者も高齢者も引っ越さなくても自宅で暮らせ、同じような暮らしが実現できるのではないでしょうか。子育て世帯も産前産後の大変なときや障がい児を育てている家庭、ひとり親、ワンオペ育児、見守りが必要な家庭など、様々ですが多世代が集う地域福祉拠点で毎日多世代食堂が開催されていて、子どもを遊ばせられる場所やゆっくりと食事を取れる場所があります。地域の人たちとつながれて、一時的な預かりをしてもらえたり、在宅支援サービスが受けられます。このように分野横断的な多機能福祉拠点を整備し、訪問サービスも展開することで、サービス付き多世代向け住宅構想が実現できるはずです。孤立、共生、重層的など様々なキーワードが言われていますが、全てをぎゅっと多機能に詰めた政策を打ち出す必要があると考えます。高齢、障がい、子ども、それぞれにサービス付き多世代向け住宅の構想を検討していただきたいですが、いかがでしょうか。

〇健康生きがい部長

区では、国が掲げる地域包括ケアシステムの考え方を広く捉えて、「板橋区版AIP」として住みなれた地域で、自分らしい暮らしを最後まで続けられることを目指しております。これはまち全体で生活支援や食の支援などが提供されて、安心して暮らせる環境につながっていくものだと考えています。他自治体で行っているサービス付き多世代向け住宅の取組を、他地域の事例を参考にしながら板橋区版AIPの進化・充実に取り組んでいきたいと考えております。

 

〇福祉部長

区では、「板橋区障がい者計画2023」においてグループホームの整備促進を位置づけるなど、障がいのある方の居住の場の確保に向け、取組を進めています。セーフティーネット住宅や居住支援法人につきましては、配慮を要する方々の居住の安定を確保するため、東京都が「東京都住宅確保要配慮者賃貸住宅供給促進計画」を策定し、施策に位置づけています。引き続き、障がいのある方一人ひとりに適切な障がい福祉サービスによる支援を行うなど、地域で安心して生活ができるよう居住の安定化に向けた地域生活支援拠点等の整備を進めていきます。

 

〇子ども家庭部長

子育て分野に関しては、近年は核家族化や地域のつながりの希薄化によりまして子育ての孤立感や負担感が増しています。様々な支援策を通じて、子育て家庭にとって暮らしやすい環境を整えることが重要です。区が実施している子育て支援に関するサービスや各種事業の質を高めていく、それとともに区と地域の多様な担い手との役割分担による取組をつなぎ合わせることで、安心して子どもを産み育てることができる環境が形成されるものとに考えています。

 

〇井上温子

それぞれAIPの取り組み方針などについて話していただきましたが、やっぱり具体的にどういうふうにしたら自宅で住み続けられるのかという政策を分解して、それを組み立て直すみたいなことが必要だと思います。サービス付き多世代向け住宅という構想をそれぞれの各所管で考えていただいて、実行していただけたらなと願っています。よろしくお願いします。

 

4.高島平のまちづくりについて

 

〇井上温子

最後に、高島平のまちづくりについてお伺いします。今まで話したことをモデルとして、高島平のまちづくりに反映していただきたいと思います。団地の街区ごとに地域福祉拠点があって、毎日食事が提供される。シェアハウスの共用部分が1階の共用部につくられたように、子どもが「ただいま」と帰ってこられるスペースがあって、障がい者の居場所にもなっていて、近所の高齢者も「おかえり」と言えるような関係性が築ける場所。高齢者も障がい者も安否確認や生活支援が展開されているので、独り暮らしでも自宅で暮らし続ける住宅となっているような、そんな多世代が住むから役割が自然とあり、希望する方は多様な働き方をし続けられて、生きがい支援とか介護予防事業がなくても、そういったものが自然と役割として担えている、そんなまちをぜひつくっていただきたいと思います。地方や海外ともつながっていて、開放的で発展的な側面を持っているような、そういった地域活性化につながるまちを具現化していただきたいと思います。「ウェルフェア」といった言葉がよく聞かれますが、それを具体的に事業に落とし込まなければ、地域の発展はないと思います。見解を伺います。

〇まちづくり推進室長

平成27年度に策定いたしました「高島平地域グランドデザイン」では、将来像を実現するためのキーワードの一つとして、「ウェルフェア」を掲げ、子どもから高齢者の方までが元気に楽しく暮らせるまちを目指すこととしました。また、昨年度に策定した高島平地域都市再生実施計画では、「ウェルフェア」に関する取組イメージの一つに、多世代・多文化の交流環境の整備を掲げています。今後の都市再生の展開については、事業の段階ごとに、その時点での社会情勢等を考慮し、具体的な施設整備を計画することになります。地域住民の方々の多世代交流や、あるいは多文化共生につながる取組となるように検討していきたいと考えております。

 

〇井上温子

言葉では、結構そういう「多世代交流」「福祉拠点を」、「ウェルフェア」などと言ってくださいましたが、それを具体的にいかに日常に落とし込むかというところがすごく弱いと思いました。それをぜひ今から地域福祉の担い手の人たちと検討を進め、ハードとしては10年という(長期的な時間が)かかってしまうような話かもしれませんが、ソフトに関してはやれることからどんどんまちづくりを進めていき、生み出していっていただきたいなと思っています。ありがとうございました。これで総括質問を終わります。

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