2023年12月11日
令和5年11月28日一般質問
11月28日に行われた一般質問で登壇し、以下の内容について、質問をしました。
区長答弁をまとめましたので、気になる箇所がありましたら、ぜひお読みください。
【子どもたちの居場所について】
板橋区の公園づくりと子どもたちの声
井上 通告に従いまして、いたばし未来会議の一般質問をさせていただきます。まずは公園
について駒澤大学萩原建次郎先生が行った板橋区内の公園利用についての調査報告書に基づいて質問をいたします。この調査は板橋区を5地区に分け、それぞれの小中学校を1校ずつ抽出して計10校で調査を行い、有効回答数が1,534件となっています。この調査の大きな特徴は、公園に関して子どもたちの視点、生の声が報告されていることと私は捉えておりまして、今後の板橋区の公園づくりに生かされるべきものと考えます。まず、最初にこの報告書に対する板橋区の認識を伺います。
区長(坂本 健) 本調査報告書は、子どもの居場所としての公園利用や意義などについて実態を調査し、分析をしたものと承知をしております。報告書によりますと子どもにとっての公園は利用頻度の高い放課後の居場所でありますけれども制約が多く、居心地が悪いと感じているとのことでありました。今後、公園整備や公園利用のルールづくりに当たりましては、報告書の提言についても考え方の一つとして参考にさせていただきたいと考えています。
井上 調査の中で3つの異なる公園を選定し、1週間分の観察記録をとる実態調査も行われておりますが、公園によって全く違った特徴が浮き彫りとなっています。公園ごとの利用状況や特徴、課題、可能性について板橋区が主体となり、全域で調査を行うことは公園づくりをしていく上で重要と考えますが、見解を伺います。
区長 区立公園ごとの実態調査についてのご質問でありますが、子どもの居場所については、屋内、屋外のほか、さまざまな性格の場所空間を視野に入れて検証していくことが必要でありまして、公園もその一つとして捉えることが必要と考えます。一方、公園利用者は幼児、少年から壮年、高齢者まで、及びその利用形態も多様な範囲に及ぶことから、子どもの遊び場のみならず、その実態も多角的に捉える必要があると考えます。このため公園整備や公園のルールづくりを行う際には、子どもの居場所づくりの観点からも公園利用の実態や在り方などについて検討を深めてまいりたいと考えています。
井上 また平日、小学生で4割、中学生で2割、休日は小中学生とも3割が公園で過ごしているとの結果が出ております。一方で子どもの半数しか公園を過ごしやすい場所と答えておらず、一部の公園においては大人から怒られたり、クレームがあったりと、過ごしにくいと答えた子どもたちもいます。区は大人からのクレームへの対応を優先しがちであると考えますが、子どもは区に困っていることを言える機会が乏しく、なかなか声も届きません。区はどのように子どもたちが安心して遊べる環境を守っていこうと考えていらっしゃるのでしょうか。対応案について伺います。
区長 公園利用に関しまして区民から寄せられる陳情は年間約2,000件ございますが、そのうち子どもに関するものは約130件でありまして、ボール遊び等に関する苦情が多数を占めております。区では苦情等に関しまして、基本的なルール遵守を原則として常識的な対応に努めておりますが、当事者が直接怒る、注意する場合に質問のようなケースが発生すると考えられます。また、小学生が走り回るので幼児が遊べないなど子ども同士の争いも寄せられるため、個々の状況把握に努めるとともに、啓発やルール化など双方の理解や協調が得られるように解決に努めてまいりたいと考えています。
井上 板橋区は、2021年に策定したパークマネジメントガイドラインにおいて、「みんなで集える公園をつくります」を目標として掲げておりますが、子どもも重要なステークホルダーとして捉えられたものとなっているでしょうか。公園のルールづくりについて意見を言える機会が確保されていないことは、小中学生にとっては非常に問題が大きいです。調査結果では、小中学生の9割以上が大人や公園利用者と意見交換をしたいと考えており、今後全ての公園において子どもがルールづくりや公園づくりに参加できるようにすべきと考えますが、いかがでしょうか。
区長 公園ルールづくりにおける子どもの参画についてのご質問でありますが、公園の利用ルールは関係法令や条例の範囲におきまして、各公園の特性や周辺環境、近隣居住者や利用者からの要望等を踏まえて最終的に公園管理者が公園ごとに定めております。こうしたプロセスの中において、利用者としての子どもたちの意見が取り入れられることは、子どもの居場所としての適性を求める上では大切かつ有効であると認識しています。具体的な方法については、小学生と幼児など年齢間の調整や他の世代のニーズとのすり合わせなど未解決の課題も多いために、全庁的な調整を行いながら検討を進めていきたいと考えています。
井上 身近な課題である公園づくりに子どもたちが参加することは、子どもたち自身が公益と私益について考えるきっかけになると考えます。また子どもたちがルールづくりや公園づくりに参加する際に、子どもたちの思いを酌み取るアドボケイターの必要性も報告書では言及されており、公園づくりを通した民主主義教育の推進とアドボケイターの活用について進めていくべきと考えますが、区の考えを伺います。
区長 令和5年4月に施行されました、こども基本法に示されているとおり、施策に子ども自身の意見を反映させることは重要でありまして、社会的活動に参画する貴重な機会が子どもの教育にも資するものと考えます。公園づくりに限らずさまざまな区の施策に子どもの声を取り入れられるよう、アドボケイトの活用なども含めて機会の創出に努めていきたいと考えています。
ボール遊びのできる公園を増やす
井上 板橋区議会に初めてとなる小学生からの子どもの遊び場についての陳情が2019年に提出され、全項目が採択されてから約3年半がたちました。ボール遊びができる公園を増やすことについては、萩原先生の調査結果においても21%が希望しています。2018年に板橋区が実施した緑についての区民アンケートにおいても、全公園でボール遊びを禁止すべきとの意見は7.2%のみです。ボール遊びができる公園を増やしていくべきという民意はまとまっているのではないでしょうか。区長はどのようにお考えか、伺います。
区長 区立公園においては、他の利用者や近隣住民に危険や迷惑を生じさせるボール遊びについて、個々の公園の状況に応じてキャッチボール禁止など、例を示して禁止としております。今後、部活動の地域移行の動きもありまして球技の可能な場の充実が求められる中、公園のみならず多様な施設の利活用や公園内野球場の多角的活用も見逃せない要素となると考えています。また、子どもの居場所に関する調査報告書にも示されるように、遊ぶ側の参画を得てルールを守る意識の醸成に地域や関係団体を含めた全庁的な体制で取り組む必要があると考えています。
児童館のあり方
井上 次に、児童館についてです。児童館の今後の在り方を考える際に、現状の課題と可能性について現場の声も踏まえ、整理をすることは必須と考えますが、文教児童委員会で資料要求したところ、そういったものはありませんでした。この状況について、区長は問題とは思われないのでしょうか、見解を伺います。
区長 児童館別の課題としましては、施設の築年数や有効面積、施設の構造、近隣地域の子育て世代数の違いなど、さまざまな条件によって異なる要因を抱えていると認識をしております。近隣に公園や商店街などの地域資源がある児童館については、相乗効果を見据えながら地域に根差した児童館の運営を図っていきたいと考えています。
小中学校の学区別の遊び場、居場所の現状や課題把握の必要性
井上 次に、小中学校区別遊び場調査について質問いたします。小学校では放課後、子どもたちに学校の中で遊ぶよう指導されています。しかし学区内にどういった資源があるのかを把握し、課題があれば改善していくといったことができていません。そこで伺います。子どもたちの小中学校の学区別の遊び場、居場所の現状や課題把握の必要性についてどのようにお考えでしょうか。
区長 学校区にとらわれることなく多様な遊び場や心おきなく過ごせる居場所が存在をしていることは、子どもたちにとっても非常に大切なことと考えます。児童館をはじめとしたさまざまな子どもの居場所の在り方について、子どもの意見にも耳を傾けながら総合的に検討を進めていきたいと考えています。
井上 子どもたちが遊び場、居場所について課題と考えていることを学区別に調査結果を集約することで学区別の遊び場、居場所の課題が浮き彫りになると考えられ、実施すべきと考えますが、見解を求めます。
区長 こども基本法に示された理念のとおり、子どもの意見を施策に取り入れることは、まさに時代の要請であると認識をしております。今年度は区立小中学校の授業時間を活用して居場所に関するヒアリングを実施し、タブレットを通じたアンケートも実施いたしました。今後も今回の取組を踏まえて、子どもの意見をより効果的に把握できるよう努めていきたいと考えています。
井上 また、小学校区別にどのような遊び場、居場所があり、何が足りないのか、遊び場、居場所の資源調査の実施についても求めますが、いかがでしょうか。
区長 区においては小中学校の居場所や遊び場として、あいキッズや児童館、アイ・ユース、まなぽーと、区立公園など、さまざまな資源を管理運営しております。民間を含めた地域資源の調査を実施する予定はございませんが、引き続き子どもたちが過ごしやすい環境整備に努めてまいります。
【保育・子育て支援策の今後について】
子育て支援策の全般的な見直しを
井上 子育て環境が大きく変化をしてくる中で、子育て支援策の全般的な見直しをすべきと考えます。具体的には一時保育、保育所、ファミリーサポート、育児支援ヘルパーの役割分担等、改めて見直す必要を認識されていますでしょうか。見解を伺います。
区長 区では誰1人取り残すことなく切れ目のない支援を実行するために、いたばし子ども未来応援宣言2025を策定いたしまして、さまざまな施策を推進しております。今後も計画の改定時期などを捉えて施策のさらなる推進や見直しを必要に応じて行ってまいりたいと考えています。
井上 東京都はベビーシッターを無料で使える事業を開始し、板橋区でも来月から利用できるようになりますが、板橋区においては保育施設や幼稚園における一時保育など、近年さまざまな事業がスタートしています。施設型で有料の一時保育はどういった役割が担えると考えているのか、見解を伺います。
区長 一時保育とは、児童福祉法によれば家庭において保育を受けることが一時的に困難となった未就学児を保育所等で預かる事業でございます。板橋区におきましては、令和5年度から32か所の保育園で実施をしており、保護者の育児疲れや入院、冠婚葬祭、家族の介護など、さまざまな理由で利用が可能となっております。利用者の数はコロナ禍にあっても年間で延べ2,000人を超えており、一定のニーズがあると認識しております。
井上 日本では、育児に外の力を借りることについて慣れていない方が多い状況にあると考えます。育児のスタート時、つまりは出産後に育児支援ヘルパーの派遣を基本サービスにするなどの工夫が価値観の変容をもたらすように思いますが、いかがでしょうか。
区長 育児支援ヘルパーとは、妊娠中から3歳未満の子どもを養育する家庭に一定の要件を満たして登録した区民を有償ボランティアとして派遣をし、家事支援等を行う事業であります。産後の母親のケアや負担軽減は重要でありまして、里親や父親の育児休暇取得など近親者のサポートを得ることが難しく、支援を必要とする家庭にご活用いただいているものであります。支援を必要とする家庭に確実に育児支援ヘルパーを派遣することが重要であり、全ての家庭への派遣を必須化することまでは考えていないところであります。
担当保健師との交流や児童館での一時預かりについて
井上 今までの議会答弁によると、産前産後の相談については担当保健師が担うようですが、実際は名前を覚えていない方が多い中でハードルが高いと言えます。在宅で過ごす時間が多い産前産後に児童館か健康福祉センターで担当保健師との交流会や座談会を行うことを提案しますが、いかがでしょうか。
区長 区では妊婦面接など、さまざまな場面で担当保健師を紹介しておりますが、実際にお会いいただけない場合も多いと考えます。児童館で行っている事業には、その地域を担当する保健師が出向くようにしておりまして、児童館が身近な相談の入り口となるように連携を進めてきております。子育て中の方が担当保健師と気軽に交流をし、何でも相談できるような事業運営を工夫するなど、こども家庭センターに向けて機能の充実に努めていきたいと考えております。
井上 次に、ファミサポと協働した児童館での一時預かりについてです。東京家政大学内にある森のサロンを視察させていただいた際に、児童館でファミサポさんに子どもを預かってもらっている事例についてご紹介いただきましたが、なじみの児童館で複数の大人の目があるところであれば安心して一時預かりを利用してみようと思える方も増えると考えます。周知し、実施を求めますが、いかがでしょうか。
区長 一時保育は、現在も区立保育園などで実施をしておりまして、一定のニーズがあることは認識をしております。国によるこども誰でも通園制度の検討状況なども注視しながら、児童館において一時保育を実施する必要性について検討していきたいと考えています。
子育て支援サービスの利用料の見直し、支援の拡大について
井上 次に、子育て支援サービスの利用料についてですが、一時保育は毎時600円、ファミリーサポートは800円から900円など利用料が課題です。東京都の無料のベビーシッターが来月から板橋区でも利用できるようになる中、板橋区の高い利用料はそのままでよいのでしょうか、見解を求めます。
区長 一時保育や育児支援ヘルパー、ファミリーサポートはそれぞれ有償により提供する子育て支援サービスであります。無償化により、より気軽に利用できるようになる一方で、各サービスの供給量にも限りがございまして、利用者の増加によって真に支援を必要とする家庭が利用できなくなる懸念がございます。また受益者負担の観点からも利用に当たりまして一定の負担は必要であると考え、現時点におきましては無償化する予定はないところであります。
井上 乳幼児期の子育て支援策が強化されてきており、大変うれしく思いますが、小中学生でも支援が必要なご家庭は多いと考えます。再度ファミサポなど育児支援サービスについて周知を行ってはいかがでしょうか。また、年齢制限は12歳までとなっていますが、サポートが必要な家庭には年齢制限をなくすことも必要です。小中学生のお子さんがいるご家庭でも無償での育児支援、もしくは定額での支援を行うことを提案しますが、見解を伺います。
区長 ファミリーサポートは、生後43日から小学6年生までの子どもがいる家庭に対しまして、一定の要件を満たして登録をした有償ボランティアが保育園や学校への送迎等を行う事業であります。子どもが中学生以上となりましても支援が必要な家庭に対しましては、社会福祉協議会のぬくもりサービスなど必要な支援サービスの紹介や調整を行っております。小学生の子どもがいる家庭に対する周知については、教育委員会とも連携をしてより効果的な周知の機会や方法について検討していきたいと考えています。
井上 養育支援訪問事業においては、特に支援が必要なご家庭に無料で養育支援を行えるとのことでしたが、利用実績はほとんどありません。利用を勧めても断られるケースがあることは伺っておりますが、そもそも対象の幅が狭過ぎるのではないか、制度が使える場合をもっと明確にすべきではないのか、子育て支援施設にも周知をすることで、よりセーフティーネットの機能を果たせるようになるのではないかと考えます。見解を伺います。
区長 養育支援訪問事業とは、子ども家庭総合支援センターが受ける子どもや子育ての相談のうち、家事援助の支援や養育の指導助言を訪問等により行う事業であります。養育支援訪問事業は、支援する家庭の状況に応じまして必要な支援内容を子ども家庭総合支援センターが判断をし、導入をするものであり、周知を必要とする事業ではないと考えています。関係機関等に対しましては、支援を必要とする家庭や心配な家庭があれば、子ども家庭総合支援センターへ適切につないでいただくように周知に努めてまいりたいと考えています。
井上 ひとり親家庭へのホームヘルパー派遣事業についても業務の見直しが必要な時期ではないでしょうか。さまざまな制限を設けていて、派遣要件には「子どもの世話や日常生活に著しく支障があるとき」とありますが、著しく支障が出る前に普通に支援ができないものでしょうか。ひとり親で頑張って働いている家庭は、特に支援が少ないのが現状です。細かく要件を定めずに支援策を拡充すべきと考えますが、見解を伺います。
区長 ひとり親家庭への支援は重要と考えておりまして、就労や一時的な病気により援助が必要な家庭への支援として、ひとり親家庭ホームヘルプサービス事業を実施しております。本事業の令和4年度の実績は15世帯の利用状況であり、区としてはさらなる周知を図り、利用者を増やしていきたいと考えています。また、事業の見直しにつきましては、まずは周知の強化を図ってニーズ等の把握をした上で検討を行っていきたいと考えています。
井上 決算の討論でも指摘しましたが、病児保育について取り上げます。実績ゼロの病児保育のお迎えサービスを廃止し、病児保育事業の体調不良児対応型の実施を求めます。この事業では保育中に体調不良となった子どもをそのまま通っている保育所の中で預かることで、保護者が仕事を休まなくとも引き続き保育ができるようにするものです。保護者のニーズが非常に高いと言われますが、見解を求めます。
区長 体調不良児対応型病児保育は、保育中に体調不良になった児童を一時的に預かるものでありまして、実施場所や職員配置等の基準が国の要綱で定められております。区立保育園におきましては、保育園に体調不良になった場合には保護者にお迎えをお願いして、感染拡大防止策を講じながら子どもの不安に寄り添った保育を行っております。体調不良児対応型病児保育に対応するためには、職員配置や衛生面に配慮された場所などさまざまな条件を満たす必要があり、現時点で実施することは困難であると考えています。
【地域医療構想について】
医療介護と行政の情報連携を迅速に進めるコミュニケーションツールを
井上 板橋区において地域医療について問合せをしようとすると、担当部署が予防対策課や健康推進課、おとしより保健福祉センターなどが窓口になっており、地域医療の推進や情報連携については担当所管が定まらない状況にあります。一方で練馬区では、地域医療担当部地域医療課があり、平日夜間救急医療や小児救急、地域医療計画、医療連携の推進等について取り扱っています。今後の高まる医療需要を見越すと、板橋区に地域医療や連携についての部課を設置すべきと考えますが、いかがでしょうか。
区長 地域により医療資源の量や関係団体との関係性に違いがあるために、地域医療の担当部署を設置している自治体があることは承知しております。板橋区は地域の医療資源に恵まれ、関係団体等と密接に連携することができており、新型コロナ対応でも効果的な事業を実施することができたと自負しております。地域医療は安全な地域生活の重要な要素であり、引き続き現体制において保健医療施策の推進に向けまして取組を行っていきたいと考えています。
井上 コロナ禍で保健所がパンクしていた当時、板橋区は全国でも先進的に医療機関と連携し、対応を行ってきたことに敬意を示したいと思います。しかし、災害の最中にもかかわらず、保健所と医療機関の患者情報のやり取りは個人情報黒塗りのファックスや電話の使用しか認められず、区と医療機関の情報連携の在り方の問題が大きく浮き彫りになりました。この経験を生かし、医療介護と行政の情報連携を迅速に進めるためにもコミュニケーションツールの導入を進めていただきたいですが、いかがでしょうか。
区長 東京都は、令和2年11月から多職種連携ポータルサイトを開設し、医療機関や介護施設等の事業者間で一元的に患者情報をアクセスできるサービスの提供を開始いたしました。また国においては令和8年度以降、全国医療情報プラットフォームにおいて自治体と医療機関、薬局や介護事業所等の間において、本人同意のもとに情報共有が可能となる仕組みの構築に向けた検討を行っております。こうした国や東京都の動向も踏まえながら、国と事業者間の情報共有の在り方について引き続き研究をしていきたいと考えています。
多死社会、高齢化社会における板橋区として医療体制
井上 また、災害時に支援が必要な方たちの個別支援計画についても誰がどう行動するのか、そしてその情報はどう共有するのか、命を守るための具体的な落とし込みが必要と考えます。区長の認識を伺います。
区長 災害時個別支援計画は、在宅で人工呼吸器を使用している方を対象に災害への備えと発災時の安否確認や関係者の支援について話合い、記載をして共有をするものであります。障害や病状によって災害時個別支援計画は一人一人違いがありまして、災害時の連絡方法もバンダナの利用や伝言ダイヤルなど、対象者により異なっております。対象者や介護者の希望に寄り添い、情報連携手段も含めて関係者と話合い、丁寧な見直しや訓練に努め、災害時個別支援計画の実効性を高めてまいりたいと考えています。
井上 日本は多死社会に突入したと言え、さまざまな資源不足が想定されますが、板橋区として今後の医療体制をどのようにお考えなのでしょうか。死に場所難民が出ると言われていたり、医療、介護の人材不足も深刻です。見解を伺います。
区長 今後高齢化の進展、特に後期高齢者人口の増加によりまして医療需要の増大が想定されます。東京都においては、医療法に基づき地域医療構想を導入した保健医療計画で将来の病床数や在宅医療の必要量を推定し、医療提供体制の整備に向けた取組を進めております。区では板橋区医師会や歯科医師会をはじめ、医療関係団体と連携をして新型コロナの自宅療養者医療サポート事業の実績を踏まえて、高齢者への医療提供の要となる在宅医療のさらなる充実に向けて取組を進めていきたいと考えております。
井上 令和元年の高齢者白書によると、治る見込みがない病気になった場合、どこで最期を迎えたいかという問いに対して自宅が51%となっていますが、実際には病院で亡くなる方は6割から7割となっています。在宅で最期を迎えるためには在宅医療の推進が欠かせないですが、その指標として板橋区在宅看取り率を把握すべきです。練馬区では看取り死の状況を分析することで、在宅療養環境整備の進捗を把握し、施策に生かすことを目的とし、練馬区死亡小票分析報告書を作成しています。板橋区でも実施することを求めますが、見解を求めます。
区長 区で受け付ける死亡届には死亡した場所の記載欄があるために、自宅で亡くなった方の件数は把握が可能であります。しかし自宅死亡の件数からでは死亡に至るまでの状況が分からずに療養上の困り事を知ることも難しいために、さまざまな手法を活用して在宅医療に係る施策評価や企画立案を行っていく考えであります。
井上 以上、地域医療について質問してきましたが、在宅での看取り率、将来の資源の見込み、医療者、介護人材など、現状の医療体制についての整理と将来見込みについて見える化するためには、地域医療構想を板橋区で定める必要があると考えますが、見解を求めます。
区長 地域における医療提供体制の確保を図るための計画につきましては、医療法の定めに基づきまして各都道府県が定めるものとされております。東京都がこれに基づきまして医療圏ごとに地域医療構想調整会議を設け、圏域内の医療機関や行政関係者が参加をして病床や在宅医療などの協議を行っております。医療に関しましては区内で完結をしないことも多く、広域的な視点が必要であることから区における医療構想を策定する考えはないところであります。
【障がい者等の支援策の運用について】
井上 障害当事者や支援者に話を聞いていると、福祉事務所や担当者によって回答が違うといった相談が多くあります。福祉事務所の対応について改善を求めますが、見解を伺います。
区長 日中活動サービスは同一種類のサービス利用を原則として、効果的な支援を行う上で特に必要と認める場合においては複数のサービスを組み合わせて利用することが可能であります。区では本人の状況とそれぞれのサービスの内容や利用形態等を踏まえた上で、効果的な支援を判断して実施をするものと考えております。今後も3福祉事務所において相談内容等を共有した上で、個々の状況、事情に職員が対応してサービスの併用につきましても必要性の判断を行っていきたいと考えています。
井上 次に移動支援についてですが、2022年の6月の一般質問で移動支援の利用幅の拡大について質問しましたが、現在も余暇活動での移動さえ細かな聞き取りが行われ、申請が大変であったり、就労や学校、児童発達支援への移動にも使えなかったりと課題は変わっていません。障害があるからといって余暇や就労、就学が制限されることはあってはならないと考えます。個々人で日々の行動が選択できるよう、柔軟な運用や利用幅の拡大をしていくべきと考えますが、いかがでしょうか。
区長 移動支援事業は余暇活動や社会活動などに参加する際、利用することができますが、就労時の移動については経済活動とみなされるために対象となっていないところであります。現時点でこの運用を改める予定はございませんが課題は認識をしておりまして、今後の国などの動向を注視したいと思います。
井上 就労継続支援B型と生活介護などサービスを併用することができるか否かも当時問いましたが、区長からは、効果的な支援を行う上で、特に必要と認める場合においては複数のサービスを組み合わせることが可能との答弁がありました。しかし、実際はそうなってはおりません。福祉事務所からは前例がない、できないといった回答があるとのことです。選択肢として可能なことが周知できておらず、効果的な支援を行う上で必要かどうかすら検討すらできていない状況にあり、改善を求めますが、見解を伺います。
区長 サービス等利用計画を作成する際、事業所の空き状況などによって思うような計画が作成できないケースがあることは、区としても課題と認識しています。今後はこれまで以上に利用者の希望を丁寧に聞き取るとともに、十分な説明の心がけをしながら利用者の理解を得た上で計画を作成するように事業者に働きかけをしていきたいと考えています。
井上 次に、重層的支援による居場所づくりについて伺います。特別支援学校を卒業後、一般就労をやめてしまった際など、もっと学びたいという思いをかなえる学びの場として、練馬区のモアタイム練馬を事例として取り上げ、板橋区で実施することを2020年の一般質問で提案してきました。重層的支援体制整備事業を活用し、こういった学びの場づくりを前に進めていけないでしょうか。この事業は分野を超えて一体的な運用を認めており、地域で学べる学校を障害者福祉や生涯学習、高齢、子ども施策を重層的に重ねて展開すべきと考えます。
区長 障害を持つ方が高校等を卒業した後に利用できる学びの場の必要性については、区としても認識をしておりまして今後の検討課題としたいと思っております。
井上 また、障害者手帳をとりたくない方や利用契約に進めない方、休職中の方、障害が確定する前の治療段階の方などが利用から外れてしまう傾向にあります。重層的支援体制整備事業においては、障害福祉施設等の既存通所施設を活用した居場所づくりの展開も可能となっておりますが、板橋区での実施についての見解を求めます。
区長 支援につながっていない方への居場所づくりについては必要であると認識しています。ひきこもり支援につきましては、今年度より専門相談窓口及び当事者の居場所である、「ひだまりうむ」を開設をし、当事者に寄り添った支援を行っております。障害者手帳を持たない方などで居場所が必要な方への支援につきましては、検討を続けてまいりたいと考えています。